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天然ゴムを含む製品にはどんなものがあるの?

[要旨]要旨
1.天然ゴム製品
2.医療用具における表示
3.天然ゴム製手袋

1.天然ゴム製品

天然ゴムは医療用具をはじめ個人用の保護用具、数多くの日用品・家庭用品・玩具など多くの製品に含まれている(表5-1)。この章では医療現場で使用する製品について記載する。

表5 - 1 天然ゴムを含む製品の例
表5 - 1 天然ゴムを含む製品の例

2.医療用具における表示

平成11年(1999年)3月の医薬品等安全性情報153号により、天然ゴムを使用している医療用具について添付文書などが改訂された。その結果、現在では、構成される部材も含めて製品本体に天然ゴムを使用している医療用具(包装材料にのみ天然ゴムを使用しているものを除く)について、添付文書またはその容器もしくは被包に、天然ゴムを使用していること、およびアレルギー症状を生じる可能性について記載し、一層の注意を喚起することとなっている。

具体的な記載内容は、「この製品は天然ゴムを使用しています。天然ゴムは,かゆみ,発赤,蕁麻疹,むくみ,発熱,呼吸困難,喘息様症状,血圧低下,ショック等のアレルギー性症状をまれに起こすことがあります。このような症状を起こした場合には,直ちに使用を中止し,適切な処置を施してください」となっている。

このような状況から、天然ゴムを含む医療用具・機器を見分けることは、以前ほど困難な作業ではなくなっている。しかし、救急医療の現場では、ラテックスアレルギーの患者が受診した際に十分に対応できるように、天然ゴム製品を完全に排除した「ラテックスフリー」の環境、あるいは天然ゴムを含む製品を可能な限り代替品に置き換えた「ラテックスセーフ」の環境を、あらかじめ整えておく必要がある。

表5-1にあるように、まずは現在使用している製品が天然ゴム製品なのかどうかを確認することが必要である。

3.天然ゴム製手袋

医療用・家庭用の天然ゴム製手袋は、ラテックスアレルゲンの最も重要かつ潜在的な供給源であると考えられている。

天然ゴム製品から溶出するタンパク質のアレルゲンの定量法として、いくつかの手法が提案されており1)、市販されている手袋の実態調査に利用されている。そして、これまでに得られた市販品調査のデータから、改良ローリー法で測定した総溶出タンパク質量が50~100μg/gサンプルを下回るような手袋を使用する限り、健康な人に新たな感作が成立する可能性はほとんどないと報告されている2)

塩素加工処理などで表面改質を施したパウダーフリーの手袋は、一般にパウダーが塗布されている手袋に比べて溶出するタンパク質の量が少なく、最近ではその使用量が増加傾向にある。既に米国の食品医薬品局(FDA)は、1999年に“Medical Glove Guidance Manual” という文書を提案し、天然ゴム製手袋から溶出するタンパク質量の低減化と、塗布されているパウダーの量を減らすことを推奨している。しかしながら、ラテックスアレルゲンにより感作されてしまった患者は、低タンパク化されたパウダーフリーの手袋を含めて、あらゆる天然ゴム製品への曝露も避けるべきである。

市販されている天然ゴム製品の安全性を確保する目的には、溶出するタンパク質やアレルゲンの量を定期的に抜き打ち検査し、結果を公表することが有効であろう。一般財団法人化学物質評価研究機構(http://www.subcerij.or.jp/index.html)やGuthrie Research Institute(米国、http://www.guthrie.org)、FIT Biotech社(フィンランド、http://www.fitbiotech.com/)などが、天然ゴム製品から溶出するタンパク質やアレルゲンの有料測定サービスを提供している。これまでラテックスアレルギーについて、600件を超える製造物責任の訴訟が世界中で起こっている。日本国内での訴訟の例はまだない。

参考文献
1) Tomazic-Jezic VJ, Lucas AD. Protein and allergen assays for natural rubber latex products. J Allergy Clin Immunol. 2002;110(2 Suppl):S40-6.
2) Yip E, Cacioli P. The manufacture of gloves from natural rubber latex. J Allergy Clin Immunol. 2002;110(2 Suppl):S3-14.